衣装・意匠の哲学
3年前にデンマークへ行ったことがある。北欧4カ国はどこの国も福祉が行き届いていて、反面 税率が高いという「大きな政府」の哲学を持つ国と言えるだろう。デンマーク内の観光話は割愛するが、綺麗な街並みとその街並みとの関わりにおける市民の意識の高さに感銘を受けた記憶がある。
ワールドカップがカタールで開催されている。中東での開催は歴史上初めてで、かつ 冬季にワールドカップが行われることも初めてだという。パンデミック以降「初めて」に遭遇することが増えたが、「カタールで」というのはパンデミックに関係なく、以前から決まっていた。日本代表の活躍はいかに。否が応でも注目してしまい、連日寝不足になりかける。
ヒュンメル、W杯ユニフォームでカタールの労働問題を指摘 ロゴが目立たない仕様に
デンマークはユニフォームに意志がこもっている。ワールドカップ開催にあたり、労働者の過酷な環境が人権意識に欠けているものだと指摘が上がっているが、その問題についてきわめて静かに、それでも強くメッセージを込めた。グループリーグ初戦、デンマークはチュニジアと引き分けで終わった。試合中の観客はサッカーを心から楽しんでいるように思えたが、そのユニフォームには哲学が込められている。
「それとこれとは別」なのである。労働問題について批判的に検討することと、選手がフィールドで躍動する姿を応援することは、矛盾しない。明らかに「大人な」この分け方に、コロナ禍で開催されたオリンピックで、選手がどのように振る舞ったのか、あるいは振る舞うように強いられてしまったのかについて、思いを馳せる。