外への回帰

コロナ禍で私たちの消費行動は大きく変わった。マスクはもはや衣服の一部であり、消毒液の塗布での手荒れもハンドクリームで克服、外出できないならと「巣篭もり需要」という現象まで起きた。

海外も同様である。日本は公式のロックダウン(都市封鎖)こそなかったが、より厳格な措置をとった国も少なくない。オーストラリアはその1つであるが、お金の使い方が大きく変わったようだ。

「アウトドアリビング」と「書斎」に資金注入【オーストラリア】

外出できないなら、とバルコニースペースや庭のデッキを拡張する。家にいるのに外にいる、この矛盾に満ちた風景は、コロナ禍で息の詰まった生活のわたしたちにとっても共感できる解決策である。

旅行の費用が下がった代わりに、家をちょっとDIYする。リモートワークになったから、書斎の机をアップグレードする。もっともなように聞こえてくる。

国内では、キャンプブームも同時並行で起きている。人混みを避けて、遊べる場所を探す。外食するならバーベキューで食事を取る。

近代化のキーワードは「安全」と「衛生」であったと思う。山は安全ではなかった(今も場所によっては安全ではないが)し、屋外で取る食事は衛生的なリスクを伴う。コロナ禍で外出先を失った私たちは、「外」に回帰しつつあると言えるだろう。

「外」の楽しみのための家 - それは実に矛盾した、と同時に人間的な豊かさをもった魅力がある。