大いなる移動
「家計資産の地域間移動」という考え方がある。
例えば、「地方に住む親」と「三大都市圏に住む子」の組み合わせで相続が発生した場合、資産の所有権は都市圏に移動する。それらの資産は「三大都市圏に住む子」の帳簿に計上されるため、モノ自体が地方にある場合でも資産が移動するような理屈になるのである。
気になるのは、その額である。「相続の発生に伴い、他地域から東京圏へ約58兆円もの資産が流入するとの試算結果となった。」つまり、日本の年間の国家予算の半分ぐらいの金額が、ものの数十年で都市圏に移動する。
いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者と呼ばれる75歳を超える世界に入りつつある。私も例に漏れず、父方・母方の両祖父母はすでに後期高齢者である。
「三大都市圏に住む子」が持つ地方の資産は今後どのようになっていくのだろう。空き家の問題が今現在ですら顕在化しているのに、人口は一層減ることが自明な社会で、移動する資産はどんな表情で都市圏に向かうのだろう。
通信と交通手段の発達によって、よく「自由になった」と言われて久しいが、所有権とはややこしいものだ。「持ちません」「必要ありません」が許されないところに不動産のつらさがあるといってもいい。